柿の栽培スケジュールを、季節ごとに分けて詳しく解説します。大きくて甘い柿をつくるためには、剪定や病害虫防除などの適切な栽培管理が大切です。
柿の栽培スケジュールを季節ごとに詳しく解説
柿は、庭植えのみならず鉢植えでも栽培できるほか、寒さや暑さに強いため、育てやすい果樹の一つです。
植え付けから収獲までに、最低でも3年〜4年ほどかかりますが、丁寧に育てることで長く収獲できます。
今回は、そんな柿の栽培スケジュールを、季節ごとに分けて詳しく解説します。
柿の栽培スケジュール(12月〜2月)
12月〜2月は休眠期で、この時期に行う作業は以下の通りです。
植え付け
柿の植え付けには、11月〜12月の秋植えと、2月〜3月の春植えがあります。
秋植えの方が根付いて成長するのは早いですが、北海道や東北地方などの寒冷地では春植えにします。
柿は日光を好むので、庭植え、鉢植えともに、日当たりと水はけの良い場所が適しています。
庭植えでは、直径、深さともに50cm程度の穴を掘り、掘った土に元肥となる有機肥料、堆肥、苦土石灰を混ぜて、その土で穴を半分ほど埋めます。
その上に苗木を置いて土をかぶせ、最後にたっぷりと水やりをします。
鉢植えの場合は、7号以上の大きめの鉢に1株を植え付けます。
鉢に鉢底ネットを敷いて軽石を入れ、元肥を施した土を鉢の半分まで入れます。
苗木を置いて土をかぶせたら、鉢の底から水が少し流れる程度に水をやります。
鉢植えに使う土は、水はけや水もちが良ければ特に指定はなく、市販の用土を使うのであれば樹木用の培養土を利用すると良いでしょう。
庭植え、鉢植えのどちらも、深く埋めすぎないように注意し、接ぎ木部が必ず地上に出るようにします。
庭植えの場合は地面から50cm~70cmの長さで、鉢植えの場合は鉢の高さの3倍くらいの長さで枝を切り、苗木に沿って支柱を立てておきます。
庭植えの場合、植え付けた後しばらくは、土の表面が乾いたら水やりをしますが、それ以外の水やりは不要です。
ただし、夏に日照りは続く場合は、様子を見て水をやります。
鉢植えの場合、5月~9月は朝夕に2回たっぷりと水をやり、それ以外は土の表面が乾いてきたときに、鉢の底から水が少し流れるくらいの水をやります。
元肥
元肥は植え付け時に与える肥料のことですが、化成肥料は避け、有機化成か完全有機肥料の使用がおすすめです。
家庭で出る生ゴミなどを、有機肥料として有効に活用しましょう。
剪定
柿は、前年に伸びた枝の先端に花芽が形成されるので、枝が長いという理由で切り過ぎると花が付かず、実がならないので注意します。
剪定のポイントは、樹の骨格となる主枝や亜主枝を明確にすることです。
枝が多すぎると実がなりにくくなるため、主枝と亜主枝の先端を決めて、そこから枝の根本に向かって二等辺三角形になるように整えます。
このとき、立ち枝や垂れ枝は取り除きます。
まずノコギリで作業を行い、その後にハサミを使って作業をすると効率的です。
柿は、残した枝から伸びた新梢(新たに伸びた枝)に実を付けるので、枝同士の間は広めにあけておきましょう。
家庭で栽培する場合は、先端を切らずに重なりあった枝を根元から切る方法の方が、簡単で失敗が少ないかもしれません。
なお、年次ごとの仕立て方は以下の通りです。
- 1年目は、地面から50cm〜70cmの芽の上で切る。
- 2年目は、枝が出てから1年未満の1年枝を、すべて半分の長さに切る。※このとき、外芽(枝の横や下から出る芽)の上で切るようにする。
- 3年目は、先端の1年枝を半分の長さに切り、上向きと下向きの枝は元から切る。※3本程度の枝を主枝候補として選ぶ。
- 4年目以降は、主枝の先端を半分の長さに切り、枝が重なる所は間引いて、上向きと下向きの枝は元から切る。※実を付けるために、切らない枝を適度につくる。
柿の栽培スケジュール(3月〜7月)
3月〜7月は開花・結実期、新梢伸長期で、この時期に行う作業は以下の通りです。
受粉
甘柿をつくるには雌花への受粉が必要です。
雄花を付ける受粉用の樹が近くにあれば、ミツバチなどによって受粉されますが、近くにない場合は人の手によって受粉しなければなりません。
ただし、渋柿の「平核無」や甘柿の「次郎」は受粉不要です。
摘蕾・摘果
大きくて甘い柿をつくるためには欠かせない、蕾や実を選別する作業です。
新梢の長い枝では5個~7個の蕾を付けますが、新梢1本あたり1個の蕾になるように間引きます。
真ん中くらいの位置にあって下向きで、虫の被害や傷のない蕾を残すようにしましょう。
なお、葉が6枚以上ない枝は、すべての蕾を取り除きます。
また摘果は、梅雨に起こる生理落果を確認した後に、葉15枚~20枚あたり1個の実になるように間引きます。
摘果を早く行うほど、実の肥大が期待できます。
夏肥
夏肥は7月上旬に行います。
7月中旬~8月中旬の間に水や肥料が足りていないと、樹勢回復のために翌年の花や実の数を極端に減らす「隔年結果」という現象につながってしまいます。
ただし、実がほとんど付いていなかったり、葉だけがたくさん茂って生理落果が多かったりする場合は夏肥は不要です。
柿の栽培スケジュール(8月〜11月)
8月〜11月は果実肥大期~収穫期で、この時期に行う作業は以下の通りです。
病害虫防除
よくある病気の一つである落葉病は、9月頃から葉に斑点ができ、徐々に紅葉して早期落葉を引き起こします。
被害を受けた実は糖度が低く、異常な軟らかさになることがあります。
落葉病の症状が出てからでは遅いので、胞子が感染する5月~7月に薬剤で防除しておくことが重要です。
また、柿の害虫であるカキノヘタムシガは、6月上旬と8月上旬に発生します。
幼虫がヘタから侵入して実を食べることで実が落ちてしまうので、薬剤で防除します。
秋肥
9月上旬頃に行う秋肥では、特にカリウムの補給をすると実が大きくなりやすいです。
秋肥は礼肥と呼ばれることもあり、収穫後の樹に養分を与えて回復させる、という意味合いもあります。
収獲
柿の収穫は10月~11月頃で、適熟となった実をハサミで切り取ります。
適熟前に収穫した場合、甘みや果汁が少ないので、収穫時期の見極めが大切です。
適熟かどうかは、実の色づき具合で判断しますが、この色合いは品種によって異なります。
通常、柿の実は緑色、黄緑色、黄色、橙色、朱色、紅色へと変化していきますが、「太秋」は黄色~橙色、「富有」は橙色~朱色、「早秋」は朱色~紅色が適熟の色となります。
柿の栽培でよくある生理落果
生理落果とは、自然に実が落ちてしまうことです。
主な原因には、肥料の与えすぎや、樹が若すぎることがあります。
樹が大きくなろうとする力が強く、花や実を落としてしまうのです。
他にも、日照不足や干ばつも生理落果の原因となります。
剪定ができておらず、日陰だらけになっている場合も、日照不足と同じ現象が起こります。
さらに、病害虫も生理落果の原因となるので、薬剤によって防除します。
柿の植え替えと増やし方
鉢植えの場合、根詰まりを防いで通気を良くするために、11月~3月に植え替えを行います。
鉢の大きさや生育具合にもよりますが、通常2年~3年に1回は植え替えが必要です。
また、樹を増やす場合には3月中旬~下旬にかけて切り接ぎを行いますが、太い枝に接ぐ場合は4月中旬~下旬に剥ぎ接ぎを行います。
まとめ
柿は、12月〜2月に植え付け、元肥、剪定を行い、3月〜7月に受粉、摘蕾・摘果、夏肥、8月〜11月に病害虫防除、秋肥、収穫となります。
肥料の与えすぎや日照不足、病害虫は、自然に実が落ちてしまう生理落果の原因となります。
このため、柿の栽培では肥料の与えすぎに注意し、剪定や病害虫防除もきちんと行うようにしましょう。
摘蕾・摘果も、大きくて甘い柿をつくるためには欠かせない作業です。